2006年08月03日

ロジスティック(6)/青木

いきなりポルノの話をします。皆さんはポルノ映画かアダルトビデオ(今はDVDかな)を思い出して下さい。見たことないひとは、適当な想像力で補って下さい。引用は高橋源一郎さんの文章です。

「ポルノ映画にはたくさんの規則がある。というか、イデオロギーがある。それは、たとえば『男性は女性を征服しなければならない』とか『男性が性交をしかけると、最後には女性が屈服して喜ぶ』とか『男性は女性を性的に満足させなければならない』とか、そういったイデオロギーである。そのイデオロギーをポルノに教えたのは社会だ。社会は表向きはポルノを嫌悪するけれど、決して排斥したりはしない。」(「愛の学校 アダルトヴィデオを読む」『文学なんかこわくない』112頁、朝日新聞社、1998)

ここで高橋さんが言っているのは、普通の、まあ3流のポルノ映画などのことです。ポルノでもいい作品があることは、高橋さん自身よくご存知です。ポルノと言うと、なにか反社会的なものというイメージもありますが、大概のポルノはそんなことなくて、むしろ社会の暗黙の(性)規範、たとえば「男は女を征服すべき」とか、そういう男性中心主義、というかマッチョな規範にしたがっている、というわけです。そういう意味では、ホモ・ソーシャルな社会は、3流のポルノをつねに必要としているとさえ言えます。

ポルノを見れば、性欲は昂進します。逆かな。性欲が昂進したときポルノを見るのかな。まあ、どっちでもいいや。高まる性欲、みなぎる期待(自分で書いてても赤面する表現だな)、ポルノはその欲望を一定の方向に整流していると言えるでしょう。たとえば「男は女を征服すべき」とかいう方向にです。一旦おさまった欲望は、巷にあふれているポルノグラフィックな表現に出会えば、またむくむくと昂進します。高まる性欲、みなぎる期待(くどくて、ごめん)、そしてまた一定の方向への欲望の整流……。普通の3流ポルノを見ているかぎり、欲望はこの一定のルートから逸れることはないでしょう。ポルノグラフィーという表現そのものの意味について考える必要もありません。

じゃ、政治がポルノを規制する場合、「社会の健全な育成」を目指しているかというと、もちろんそんなことはありません。むしろそういうときには、価値観が同質化した一層ホモ・ソーシャルな社会への方向づけを狙っている場合がほとんどです。日本でも現在、性表現や性行動に対する規制が強まっているようですが、これも同質化した社会的価値観の形成を目指しているんじゃないかと思います。

社会は単にポルノを規制しているわけではありません。むしろ社会は、規制の身振りも含めて、ある種のポルノの存在を必要としています。欲望を一定の方向へ整流する装置、あるいは欲望の備給を操作する戦術として。こうしたことは、ポルノばかりではなく、広告と消費行動全般についても言えると思います。というか、人間の無意識な欲望に関わる実にたくさんの事柄に当てはまります。

もしこのような戦術を、統治の場に繰り広げていけたら、どうなるでしょう。つまり、市民の欲望をあらかじめ一定の方向に押し流すようにできる政治的な装置を作れば、どうなるでしょう。むちゃむちゃ便利に決まっています。世論の操作、デモや抗議行動の「予防」、労働現場での管理、「不審者」の監視(「不審者」という曖昧な言葉からして、もともと政治的な装置と言えます)、さらには市民自身による相互監視のシステム……応用の範囲はいくらでも拡がります。「社会に不適応なやつ、何をしているのかわからないやつ、働けないやつ、孤立したやつ、危なそうなやつ、そうした『不審者』には何をしてもいい、徹底的に監視し管理しても許される」、そういう一定の欲望の流れを作り出せさえすれば、政治にとっては願ったりかなったりです。取り締まりの手間が省けるというもんです。

ぼくがロジスティックのふたつ目の意味、つまり「(欲望の)備給戦術」という意味でとらえているのは、大体こういうことです。前回の記事に述べた「記号論理」としてのロジスティックとは別に、ロジスティック(logistic)という言葉にはもともと「兵站術」という意味があります。「兵站術」というのは、たとえば戦争のときに前線に食糧や軍需品をどう運ぶか、そういう作戦のことを言います。この意味をちょっと広く敷衍して、欲望とその対象との結びつきを操作する作戦として「備給戦術」という訳語をつけてみました。「備給」というのはフロイトの用語でもあります。

次回はこの「備給戦術」としてのロジスティックが、「心神喪失者等医療観察法」とどう結びつきうるか、を考えたいと思います。

ところで、前回ぼくの職場のことを書いたら、何人かの方から御連絡を頂きました。ありがとうございます。本社に連絡を取ったら、迅速かつ誠実に対応してくれて、事なくおさまりそうな感じです。一介のパートに過ぎないぼくの苦情をきちんと聞いてくれた本社の今回の対応は、正直うれしかったです。早稲田大学よりずっとマシじゃん、って感じ。もちろん、今後も職場で組織的な嫌がらせなどあったら、必ず闘ってゆくつもりです。
posted by aoki at 09:11| Comment(1) | TrackBack(4) | 青木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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